九州動物学院
 

梅雨に入って、体調を崩す人が多くなってきました。体調不良は誰にでもあることですが、人間には・・いや動物には元々、「回復しよう」という本能が備わっています。身体の持つ自然な反応なのですが、これが「自然治癒力」なのです。

 身体に異変が起きた時、細胞の一つ一つが「生きよう」として活動を始める。生きるために必要だから、求めに応じて身体が自然に反応する。動物も同じで す。犬は体温の上昇を感じたら、「はぁはぁ」と呼吸が荒くなります。これはしんどいからでしょうか?いいえ、大きな口を開けて呼吸回数を増やすことで、体 内の熱を放出しているのです。動物には汗腺がありませんから、汗をかいて体温を下げることができない。代わりに、呼吸がその役割を果たしているのです。す ごいでしょ?ヒトも動物も、緊張したら途端に血圧が上昇します。寒かったり、暑かったりすれば、呼吸数も心拍数にも異変が起こる。これも動物の本能。身体 の防衛本能がなせるワザですね。

 こうした本能を「恒常性」(ホメオスタシス【homeostasis】)と言います。「生物の生理状態などが一定するように調節される性質」のことで、 治療もこの性質をうまく利用すれば、より以上の効果を上げることができます。元々備わっている「病気を治そうとする力」を大切にすることで、治療もスムー ズにいき、無用な負担もかけずに済む。一番理想的な形です。

 この性質をより強力にするためには、身体がその力を長く維持しようとするよう働きかけてあげる必要があります。例えば、高熱が出た時。通常は解熱剤を投与しますが、場合によっては解熱剤ではなく発熱物質を投与することがあります。
「えっ!」と思われるかも知れませんが、過呼吸(過喚起症候群)が起きた時のことを考えてみて下さい。息ができなくて必死に呼吸をしようとする患者に対 し、酸素は与えない。紙袋で口を覆い、自分の吐いた息・・二酸化炭素を吸わせます。必要と思われることの逆の対処をすることが、恒常性をさらに強化するこ とになるのです。あたかも逆と思われる対処が、身体の「生きなければ」と頑張る力に手を貸すことになる。本当に素晴らしい。まさに生命の神秘です。

生命の不思議はまだまだあります。死に瀕して横たわったまま動かないはずのペットが、飼い主の姿を見た瞬間に立ち上がり、飼い主に寄り添おうとする。ま た、回復する見込のない病気に冒され予後不良の場合、「あとは自宅で看取ってあげて下さい」とお返しすることが間々あります。ところが「食べるようになり ました!」と言って、喜んだ飼い主さんから電話が入ったりするのです。まさに奇跡の瞬間です。「求める命と求められる命」が引き合って、医学では証明でき ないような奇跡が起きた瞬間です。どうですか?生命ってすばらしいでしょう?