九州動物学院
 

つい先日、福岡で土佐犬が人を咬んで死亡させてしまうという事故がありました。それも被害にあったのは飼い主さん。ニュースをよく聞けば、大型の犬舎を 作ってその中で飼育をしていたようで、大変かわいがって飼育していた様子がわかりました。それなのにどうして、こんな悲しい事故が起きてしまったのでしょ うか。残念で仕方ありません。

 土佐犬と言えば、「危険な犬」とか「人を咬む犬」とかイメージが固定化されている気がします。メディアも土佐が人を咬んだと言えばニュース性があるから 飛びつく。イメージばかりが先行していますが、よく考えて見て下さい。犬は土佐じゃなくても咬みます。小型犬が咬めば「咬まれちゃった」で済んでも、これ が土佐のような大型犬だったりしたらそれだけでは済まない。その差です。
犬同士のケンカもそうです。飼い主から見たら「ケンカ」でも、犬にしたら「生きるか死ぬか」。遊びではないのですから、本能のおもむくまま、頚動脈を一撃 することもあるでしょう。そんな時も、小型犬同士なら多少の怪我で済んでも、これが大型犬になれば話が違う。それがイメージの正体です。

 口咬事故で人が怪我をしたり、ましてや命を落とした時、たいていの場合、犬は処分されます。今回の土佐も例外ではないでしょう。では犬が悪い?いいえ、 ここまで育てた飼い主の責任は重大です。では飼い主が100%悪い?もちろん違う。周囲にいたプロの方々の指導力が不足していた。こうした悪条件が重なっ て、今回のような事故は起きてしまうのです。

私たちはプロです。こうした場合、咬まれた事後のことよりも、むしろ「どうしてこういう事故が起きてしまったのか」という事前の状況を推し量る視点を持た ねばなりません。飼い主さんがどんな風に育てていたのか。どんな環境で暮していたのか?犬が不快に思うような状況はなかったか?・・などなど。こうした状 況の分析をするためには、犬の習性や行動学をしっかりと学ぶことが必要です。行動学を学べば、犬種別の扱い方がおのずとわかる。こうして学んだ知識を糧 に、素人の飼い主さんを教育するという重大な責任が私たちにはあるのです。

 犬はかわいいです。ましてや自分のペットならなおさらでしょう。でもかわいいだけではいけません。犬を飼うのであれば、「理解」していないといけないのです。それがないと今回のような事故は後を絶ちません。
 毎日のように、日本のどこかで大なり小なりこうした事例は起きています。本当は信頼と言う絆で結ばれたベストパートナーであるはずの関係が、一瞬の出来事で崩れてしまう。本当に悲しいことです。
 ペットと飼い主という、健全で安全な関係を維持するためのお手伝いをしましょう。きちんと学んで、きちんと指導して。こうした事例が一件でも消滅するように。