九州動物学院
 

ペットを飼っている方に私は時々お尋ねします。「1ヶ月にかかるペットの食事代はおいくらですか?」たいていの方は、まず首をかしげてお悩みになります。そして、「う~ん、1,500~2,000円くらいかなぁ?」と、あまり正確に把握していない方がほとんどです。

 例えば医療費。普通にペットを飼っていたら、予防接種に健康診断。元気に暮していたとしても、当然かかる費用です。それでもこの「当然」という感覚には 個人差があります。何故なら、きちんと予防接種をして、定期的な健康診断を受けている飼い主さんは、しょっちゅう動物病院を訪れているので、だいたいの相 場がわかっていらっしゃいます。それに比べて、あまり動物病院を受診したことがない飼い主さんにとっては、相場の感覚などまるでないので、「動物病院は高 い」というイメージをお持ちです。こうした先入観からか、ますます動物病院から遠ざかっていくことになるのです。

 この差はどこからくるのでしょうか。これは完全に「ペットの価値観」の差です。今はペットフードが充実していて、いわゆる「ピンからキリ」まで揃ってい ます。その価格帯は500円程度のものから3,000円くらいまで、非常に幅があります。どれを購入するかは、飼い主さん次第。ペットに対する意識のバロ メーターです。ペットに対してお金をかける人は、それだけの価値観を持っている証拠で、こうした飼い主さんの元で暮すペットのQ・O・L(クオリティー・ オブ・ライフ)は非常に高い。ペットだから、価値観に差が出るのは致しかたないことでしょうか。
しかしながら、子どもにお金をかけることに、「もったいない」と感じる親はいないでしょう。好きな人へ贈り物をする時も、時間をかけて品定めをし、かける お金も惜しまない。これは決して珍しいことではなく、普通の感覚のはずです。ならば、ここまで人間社会に密接にかかわり、家族同様の生涯を送るペットに対 する感覚も、「普通の感覚」となるまで引き上げてあげる必要があるのではないでしょうか。

 固定観念で動物病院から遠のいている飼い主さんとの距離を縮め、予防接種や定期健診など、ペットの健康な毎日に必要な飼育管理法を飼い主さんに指導し、 ペットと共に生きる毎日のクオリティーを上げることも、私たちの大切な仕事だと思います。「ペットは家族」と思う人とそうでない人は、昔ほどではありませ んが、確かにあります。またこれとは逆に、血統書付とMIX(雑種)のペット。同じ動物であるはずなのに、扱いも価値も天と地ほど違う待遇を受けていると いう現実もあります。私たち人間の価値観一つで、動物たちの命運ははっきりと分かれているのです。

 どんな命もいのちはいのち。そこに差があってはいけません。とはいうものの、この差を埋めるのは非常に難しいのも現実です。さあ、プロを目指す皆さん。この現実にどう立ち向かいますか?腕の見せ所であると自覚して、しっかりナビゲートして下さい。