九州動物学院
 

先日、立て続けに2件の安楽死をしました。どちらも致し方のない事例で、飼主さんも深く思い悩んだ末の決断でした。
 
 そのうちの1件は、14歳くらいの犬でした。年のわりにはしっかりした犬で、外飼育ではありましたが、飼主さんの説明から飼育環境にも気を配っていらしたのが伺えました。
 ところがこの犬が「人を咬む」というのです。すでに2~3回の咬傷事故をおこしていました。ごはんもきちんと食べ、呼べば寄ってくる。飼育状況にも、犬の方にも何ら問題がないように聞こえるのですが、人を咬むというのは大きな問題です。
 
 実はこのお話は、数日前にさかのぼります。その犬の首輪が壊れて外れてしまい、つけようとした飼主さんまで咬んだのです。何度試みても、絶対に首輪をさ せない。敷地内とは言え、「他人を咬んだらどうしよう」と思い悩んだ飼主さんは、とうとう動物病院に相談にやってきたというわけです。
最初は少量の安定剤を処方し様子をみることに。ですが効き目がない。だんだん処方する量を増やしてはみましたが、どんなにふらふらになっても、首輪だけはつけさせないというのです。

 思い余って、動物愛護センターにも相談してみました。ところがうまい方法がみつからなかった。首輪もしていない状態での捕獲が難しいのは当然でしょう。 飼主さんはもうノイローゼ寸前の状態で再度来院されました。こうして考えに考えた末、安楽死という選択にたどり着いたのです。

 安楽死について、皆さんはどう考えますか?私は安楽死を前にした時、「この命は助けられないか?いや助けたところで幸せなのか?」といつも自身に問いかけます。総じて日本人は気質的に、安楽死に抵抗感をもつ方が少なくありません。
 ところが動物先進国の欧米では、その数も圧倒的に多くなり、「悪条件があれば淘汰してしかるべき」と、考え方が全く違ってきます。いいとか悪いとかではなく、どちらも「動物たちと幸せに共存するためには」を考えた結果なのです。
 
 昨今、里親探しが各所でありますが、これは一度放棄された犬や猫が、もう一度社会復帰・・新しい家族をみつけるための活動です。ところがこの時も、単に 「かわいいから」とか「よさそうな犬だから」・・だけではだめなのです。その動物が遺棄されるに至った経緯を知り、なおかつその犬の性質も把握する。その 上で初めて、里親を希望する飼主さんとのマッチングが叶うのです。

 できればどの動物も幸せになってほしい。ですが、安易で情に流された手助けは、不幸の連鎖を招くだけ。結局再び痛みを抱くことにほかなりません。私たちはプロとして常に冷静で、常に平等な見地に立って、人と動物をアシストしたいものです。