九州動物学院
 

今、私の関心事の一つは、ペットボトルのキャップ集めです。400個集めたらポリオワクチンに変わるこのボランティアは、もちろん学院だけでなく、熊本 市街地や各大学構内など、あちこちで活発になってきました。学生の皆さんにも声かけをして協力してもらっていますが、ずいぶん集まったようでうれしく思っ ています。たかがキャップ・・されどキャップ。こんなに集中していると、人様がまだ飲んでいるペットボトルまで気になるようになりました。一つのことに集 中したら、やたら目に付くことがあります。それが思いの力です。それも瞬間ではなく、ずっと思い続けることが大切。継続は力なり・・と言いますが、やりと げるには必要な力です。

 また、何かを継続するためには、「乗り越えないといけないこと」もあります。例えば獣医看護師の仕事で言うなら、「臭い」がそうです。動物病院にはさま ざまな「臭い」があります。まずはもちろん糞尿の臭気。吐しゃ物の臭いもそうですね。でももっと強烈なのは、化膿した部位や腫瘍など、病巣からの臭気で す。
今も定期的に通院してくる患者さんで、足に腫瘍ができた犬がいます。腫瘍部位はすでに化膿し、出血もあります。この臭いがすごい。腫瘍部位は、まるでざく ろが割れたような状態ですが、すでに高齢なので手術も難しく、今は2~3日おきに洗浄消毒するくらいしか手立てがありません。

ところが、洗浄消毒を続けてどのくらいたった頃でしょうか。だんだん臭いが弱くなってきたのです。獣医師の私でも思わず「良くなってきたのではないか」と 思うくらいでした。病院を嫌がる犬でしたので、飼主さんは通院そのものも大変重労働でした。よほど安心なさったのでしょうね。翌日から1週間くらい音沙汰 がありませんでした。
 ところが、しばらくして通院してきたその犬を見てびっくりしました。初見では部位もキレイだし、臭いも少ない。一瞬、「良くなったのか」と思いました が、末期の悪性腫瘍が良くなるはずがありません。診察して驚きました。傷の中でウジがわいていたのです。臭いがなくなったのは、化膿して壊死した組織をウ ジが食べていたからで、当然のことながら治ったわけではありませんでした。でも一瞬、「傷口もきれいで臭いもなくなったなら逆に良かったのでは」と思うく らい、見た目も臭いも改善されていたのです。臭いからの解放による安堵感が招いた事例ですね。

 このような状態の患者さんはこの犬だけでなく、単に長期間放置され異臭を放つ程度のペットたちも含めたら、相当数に上ります。それでも「におい」から逃 げるわけにはいきません。でも臭いものは臭い。これを乗り越えるには、慣れるしかありません。慣れてきたら、少しでも負担を軽くする方法を身につけるもの です。臭いであれば、「鼻ではなく口で息をすること」。いつの間にか上手になってくるのです。
毎日の積み重ねが達成につながり、継続によってスキルは身につくのです。「思い込みの力」をフルに発揮して、ステップアップしていきましょう。