九州動物学院
 

ここ数日、急に寒くなりました。最低気温がヒト桁になったのですから、寒いはずなのですが、人は「寒い」と思うと余計に寒く感じる。「寒くない!」って思えば、そうでなくなるようにできているのです。気づいていましたか?
 人間はつくづく「思い込み」に大きく左右されているんだなと言うことが、動物業界にいるとすごくよくわかります。なぜって・・センサーのような動物たちと接しているからなのです。

 対ヒトとのコミュニケーションの場合、どうですか?例えば初対面の人が「怖そうに見えた」とします。途端に引くでしょう。ですが、お世辞を使ったり、ご 機嫌を伺ってみたりと、なんとかその方と「うまくやろう」と心がけます。初対面で怖いと感じたその人と、コミュニケーションを図る努力をするはずです。た だし、いくら仲良くしようと心がけていても、心の中では「怖い人」と思っているし、できれば深いかかわりは持たないでいようと思っているかも知れない。そ う、人間は、お世辞やいわゆるお愛想で、その人との適度な距離を保とうとします。こんな風にバリアを張ったとしても、対話やコミュニケーションは対ヒトで あれば成立するのです。

 ところが対動物の場合は、この手法が全く通用しない。ストレートに内面が伝わってしまうのです。例えば診察時、動物看護師に向かって「この犬は咬むよ」 と伝えれば、少なからずびびります。逆に「おとなしい犬だからね」と言えば安心する。犬は同じはずなのに、先入観を与えただけで、その仕事振りは大きく変 わります。いったん「怖い」と感じてしまおうものなら、犬は簡単にそれを見抜き、途端に豹変したりします。
 よくあるのが、「注射しようか」と言った途端、動物が暴れ始めることです。「わかるんだね」と飼主さんは感心していますが、実は違うのです。これも思い 込みのなせるワザで、注射と言った途端に、身構えるのは実は看護師で、保定に一瞬力が入るのです。それを危険と察知した動物が反応する・・というのが実情 だったのです。

 繰り返しますが、これは本当によくあることです。新人看護師は逆に少ないのですが、咬まれたり、ひっかかれたりを経験した半年くらい経った看護師が、動 物を怖いと思うようになり、つい過剰反応してしまう。それを動物が察知して、また咬まれる。悪循環ですね。これは乗り越えないといけない大きな壁です。

こればっかりは教えてもだめです。心の中に自信を復活させないといけない。それにはどうするか・・毎日の生活の中で、心を切り替えるレッスンをするしかあ りません。「さむい」と思った瞬間「寒くない」と切り替える。「いやだな」って思ったら、即「楽しいな」に思い直す。心をコントロールできる人だけが、身 体をコントロールできるのです。いかなる時にも、自分をコントロールできることが、動物たちの心に触れる近道であり、獣医師のベストパートナーとなれるの です。思いの力を身に備え、質の高い仕事ができる看護師を目指しましょう。