九州動物学院
 

私たちの仕事は単独ではなく、そのほとんどがチームプレイです。パラメディカルチームの一員として、常に「自分の役割は何か」を考えて行動せねばなりません。今はそのための勉強をしているのだと思っていて下さい。

 とは言うものの今学習している講義のうち、座学の方は、そうそう頻繁に臨床の場面で必要な知識というわけではありません。どちらかというと、臨床現場で 仕事をするための裏打ち的なことなのです。例えば「肋骨が何本あるのか」などと言うことは、普段の診察で問われることはないでしょう。ですが診療に携わる 者として知らないと話にならない。患者さんに聞かれた時に答えられないなんてことも論外です。このように社会に出たら「知っていて当たり前」な知識を、今 は身につけているのだと心得ておいて下さい。

 臨床の現場ですぐに必要な知識や技術は、むしろ教科書に書かれていないことの方が多かったりします。例えば保定ですね。教科書には写真つきで手順を解説 してありますが、それだけではなく感覚的な能力が要求されます。私たちは一日中、何十・何百頭という動物たちを診察しますが、その日々の繰り返しの中でこ の感覚的な能力は養われていくのです。体が覚えるという表現が正しいと思うのですが、技術というものは見て学ぶものではなく、経験こそがものを言うので す。この犬は危険かそうでないかを見極めるにしても、毎日違う犬たちに触れ、危険な目にも合いながら身につけた感覚だからこそ判断できること。いかに動物 たちと触合うことが大切な勉強になるか、わかってもらえましたか?

 何もそれは診察時に限ったことではありません。例えばここには飼育動物たちがいますが、毎日触れ合っていますか?飼育当番以外でも、休憩中にトレーニン グしたり、遊んであげたり。そんな時間の中でも学べることだったりするのです。例えば見知らぬ犬に手を出す場合も、上からではなく下から手を出すことと知 識では知っていても、とっさにそれができるとは限りません。これこそが毎日動物に触れ合う中でしか身につかない習慣です。こうしたレッスンは、学びの場だ からこそできることで、社会は毎日が本番です。目の前に来た動物たちとの一瞬一瞬のために必要な感性をしかりと研ぎ澄ませて頂きたいものです。

 チームの一員として、獣医師と患者(動物)そして飼主との間に立つキーマンとして、あなた方獣医看護師が担う役割は大きいですね。優秀な獣医看護師は獣 医師にとっては宝。看護師の仕事が上質なら、獣医師は腕がいいと言われるし、またその逆もしかりです。自身の置かれた立場を自覚して、周囲の状況が見渡せ る「宝」と言われるプロになって下さい。
 そうは言っても、仕事をしていく中では、どうしようもなくスランプを感じる時期があります。何をしても上手くいかない毎日に、心は折れそうになります。 でも覚えておいて下さい。仕事にも、人生にも必ず波はあります。またそんな波がないと人間は成長しないのです。失敗は辛いものですが、失敗を次につなげる 力が、ワンランク上の自分に導いてくれるのです。
 雨風やどんな横やりにも耐え、「なにくそ」と盛り上がってきた人にだけ、本物のプロになれるチャンスは与えられます。「極上の仕事はスランプの中でつかむもの」だということを、どうか忘れないでいて下さい。