九州動物学院
 

今は猫の出産ラッシュの時期です。診察やオペ以外に、動物病院でその時期を痛感せざるを得ない出来事があります。それは「捨て猫」です。朝、動物病院の 入口に不審な段ボール箱が置き去りになっている。私たちスタッフが一番落胆する朝の光景ですが、この中には生まれて間もない子猫だったり、どうかすれば親 猫も一緒の場合もあったり。この時ばかりはやるせない気持ちになります。

 私の病院では開業当時から、こうした行き場を失くした動物たちの里親探しをしています。新しい家族の元で幸せな生涯をと、懸命に来院者に声をかけ、今ま で数知れない犬猫たちを里親に託しました。ところがある時ふと、「自分たちがしていることは、本当に動物たちの幸せのためになっているんだろうか?」と、 疑問に思い始めたのです。 

 当時、里親を探す私たちは必死でした。里親の意思を示して下さった方には、フードもつけるし、予防接種もする。そして経済的不安を訴える方には、不妊手 術まで約束をしました。このように丁重に「もらって頂いた」はずなのに、数日後、「突然いなくなっちゃいましたんで、別の猫もらえませんか?」などと軽い 電話がかかることも少なくなかったのです。他にも、予防接種の予約をして行ったはずなのに現れない。不妊手術の時期が来ても、数か月・数年が経過しようと も、二度と受診に訪れることがないなど、適正飼育の可能性が極めて低い状況に気付いたのです。その数約8割。貰われた先で幸せになっていないかも知れない という現状が、私たちのこれまでのやり方を大きく転換する誘因なりました。そう、「もらって頂く」方針を変えたのです。

 里親希望者には一律、2,000円を頂くことにしたのです。「管理料」とでもいいましょうか。何しろ捨て猫を買って頂くことに決めたのです。最初はすご く抵抗がありました。「捨て猫にどうしてお金がいるのか?」とか、「そうまでしてお金儲けがしたいのか?」などと揶揄する方もいらっしゃった。それでもそ の方針は譲りませんでした。

 この方法は見事に的中しました。今までの8割が逆転し、予防接種から定期診断、果ては不妊相談まで、ほとんどの里親さんが受診に訪れるのです。お金を支 払ったという心理が、結果的に命のレベルを引き上げたのです。「お金なんかで」なんて思わないで下さいね。お金もそうですが、フードやペットグッズなど飼 育に必要なものを購入しているうちに、「この子のために何かをしてあげたい」気持ちとペットに対する愛情は徐々に育っていくのです。
小さな命を守るために必要なことはたくさんあります。そんな動物たちのために、飼主のために、「与える・教える・支えられる」プロを目指して下さい。