九州動物学院
 

動物病院にやってくるペットたちは、当然のことながら「飼主さん」に連れられてやってきます。その間柄は親子や夫婦、恋人同士などさまざまでしょうが、あ くまでも想像の域なので実際の関係はわかりません。ところが、その飼主同士の力関係や新密度などはたいていはずれない。ペットを診察しているだけなのに、 その空気感でなんとなくわかってしまうものなのです。「うまくいっていないんだろうな」と思う飼主さんの間を取り持つように存在するペットをみるにつけ、 その不思議な力を実感する毎日です。

このように、ペットは意外や、こんなところでもその役割を果たしているのがわかります。昔から「子はかすがい」と言いますが、今や「ペットはかすがい」と 言った時代を迎えたようです。人間関係がますます希薄になる昨今、集合住宅に住もうものなら、「お隣の方と言葉を交わしたことさえない」・・さして珍しい 言い分ではないでしょう。そんな時代にあって、ペットの存在がいかに大きな存在であるのかを、考えてみたいと思います。

「人間関係がわずらわしい」または「コミュニケーションが苦手」。最近、こんな方々が増えています。身の回りにもきっと少なからず、こんな悩みを抱えた方 がいらっしゃるでしょう。そんな時、「ペットを飼ってみませんか?」と勧めて見て下さい。単独では対人間に緊張を覚える方であっても、そこにペットが介在 するだけで難なく言葉が交わせることがあります。
例えば、公園に一人でずっと座っていたら「おかしい」と思われたとしても、傍らに犬がいれば、その行動に違和感を感じる方は100%いないはずです。そし てただ犬を連れているだけなのに、声がかけやすくもなる。そう、ペットの存在が人間関係の垣根をいとも簡単に取り払ってくれるのです。

診察に来られる飼主さんもそうです。誰が見ても「強面」のお兄さんがいたとしましょうか。単独で歩いていたら怖がられる存在だったとしても、ペットに相を 崩す姿を見れば何となく微笑ましくさえある。そうです、ペットがいるだけで、大なり小なり人生が変わってしまうのです。一人では散歩なんてしなくても、犬 がいれば当たり前になりますし、動物病院やペットショップなど、今まで行かなかったような場所に出かけることも増えてくるはずです。フィールドが違えば、 出会う方々も全く違ってくる。そんな人生の大転換が、ペットによって起きるとしたら、「ペットはかすがい」以外の何ものでもありません。

私も愛犬を連れて毎日散歩に出かけますが、日常、それほどフレンドリーでない私も、つい見知らぬ方に声をかけたくなります。声をかけられた側も、つられた ように笑顔で応えてくれる。これこそが、「ペットコミュニティー」だと思います。私たち動物関係者の使命は実はここにもあるのです。人と動物の間に立ち、 木と木をつなぐ鎹(かすがい)のような、欠くことのできない存在になってほしいと思います。