九州動物学院
 

犬や猫たちの寿命は平均して15年くらいですが、「人生80年」と言われる私たち人間と比べたら、なんと短い生涯なのでしょうか。と言っても、なかなか 感覚的にわかりずらいかも知れません。では、皆さんの年令をペットの年令に換算してみましょうか。18才の皆さんは、だいたい「ペット令:1才くらい」の 計算になるので、ペットの一日は人間時間で換算すれば、1週間くらいに相当することになります。
 例えば、皆さんが1泊2日の旅行に出かけることになり、ペットをホテルに預けた場合、私たちにとっては「翌日のお迎え」でも、ペット時間に換算すれば、「2週間後のご対面」ということになります。
お散歩もそうです。「今日は行かなくてもいいかな」という「ほんの1日」のつもりが、わんちゃんにとっては「1週間のひきこもり」になってしまう。だいたいおわかり頂けましたか?動物のプロを目指す皆さんには、このことをいつも心に留めておいてほしいと思います。

 この感覚はプロだけではなく、飼主さんにもぜひ身につけて頂きたいと思い、私は特に、生後間もないペットを連れて診察に訪れた飼主さんには、「できる限 り写真を撮ってあげて下さいね」とお勧めします。それは、「ペット時間」に関わることですが、生後1年間の成長ペースは目を見張るものがあり、1日・1週 間と目に見えて成長がわかります。私たちの20年間を集約した成長を遂げるのですから当然のことでしょうが、毎日表情が変わったり、昨日までできなかった ことができたりと、この時期の著しい「成長」をどうか見逃さないで頂きたいのです。
また、生涯の中で一番社会性が身に付く大切な時期でもあります。成長を慈しみながら、時間をかけて遊んであげたり、体のあらゆる部分に触れてみたりと、愛情込めたコミュニケーションも怠らないでほしいと思います。

「太郎はかけがえのない存在です。それは唯一の存在であり、一回きりの存在です。」

 これは私の病院の薬袋の裏面に印刷した一文です。この言葉に私は、かけがいのない動物への思いを込めたつもりです。飼主さんの中には、「オスは『太郎』 メスだったら『花子』」とペッとの命名法を固定化している方がいらっしゃいます。これは、「次のペットもまた同じように愛してやりたい」という気持ちの表 れだと思います。
 ですが私は、決していいとか悪いとかではなく、新しい命には新しい名前をつけて迎えてあげてほしいと思っています。同じ犬種であったとしても、目の前に迎えた新しいペットは、唯一の存在であり、どの命とも代わることのできない存在だからです。

 冒頭私は、ペットの15年の生涯が短いと言いました。ペットがその生涯を全うするためには、「長生き」が重要なのではなく、「いかに生きたか」が大切な のです。かけがえのない存在として、大好きな飼主さんと共に生きる毎日こそが、ペットの唯一の幸せであり、これに勝る幸せはないでしょう。
 自宅であなたの帰宅を待ちわびるペット。帰宅した飼主さんと「再会」を果たす瞬間を、一日一日を大切にする気持ちを、どうか15年間大切に持ち続けていて下さい。