九州動物学院
 

6月に入って一週間が経ちましたが、この時期はあらゆる生物が活発化する時です。草木も萌え、動物たちも一層元気を増してきます。
この時期、もう一つ活発になるのが、ノミ・ダニです。梅雨ともなれば、たった1匹のノミ・ダニが、1週間で数千匹余りに増加しますので、驚きの生命力です。こうなれば、最初の1匹の駆除がいかに大切なことかおわかり頂けると思います。

そして毎年この季節になると、こうした害虫駆除の相談が当然のことながら増えます。その昔は蚤取粉や蚤取シャンプー、蚤除け首輪などが主流でしたが、今は スポット式の液体が主流です。使用法も実に簡単かつ効果も抜群で、24時間以内には完全に死滅します。なのに、動物への副作用はほとんどないという優れも の。付けた瞬間からぽろぽろと死んで落ちてきますので、実に爽快感があります。

このように実に簡単・爽快に害虫駆除ができるようになったのですが、未だにお年寄りは昔通りに「潰す派」が多いようです。毛づくろいしながら害虫を探し、 見つけたら指の先で「ぷちっ」と潰す。これはこれで快感なのかも知れませんが、この方法、獣医学的見地から言えば、良くない方法だったりするのです。経験 者はおわかりでしょうが、潰した時に出てくる白い液体。これには多くの卵が含まれていて、潰すことでそれが飛び散ってしまい、繁殖を助けることになるので す。旧来の方法で完全駆除を目指すなら、水につけるか液体洗剤をかける・・これがベストでしょう。

こんな風に私たちは当たり前のように害虫駆除をしていますが、ふと考えることがあります。「害虫たちにも家族や恋人がいるんだな」と。忘れがちなことですが、ペットたちと同じ、命ある生き物なのです。
例えば道端に咲く一輪の花。美しさのあまり手折った経験はありませんか?家に飾ることで確かに癒されますが、これもまた命なのです。

私たちの学院では「敬天尊名(天から授かった命を尊ぶこと)」を精神とし、動物に関わる職業を志す私たちにとっては、命について深く考えることが使命だと言っても過言ではありません。
人を殺すことは言うまでもなく大罪です。では日常的に駆除している蚤は?ダニは?ハエや蚊もそうですね。家の中を飛び回るハエを見ると、反射的に叩きたくなりますし、蚊が来ようものなら親の敵のように徹底的に叩き潰します。

でもちょっと待って。確かに害虫は媒体となって病原菌を巻き散らす悪役です。だから「駆除して当然」?ここまでは一般の方の考え方です。命について学ぶ私 たちは、そこで少し立ち止まるべき立場なのです。決して明確な答えのある問題ではありませんが、人と動物の命に、また虫や魚、そして植物の命に格差があっ てはけないのです。   
日常反射的に「駆除」という行為をしていたあなた方から、瞬間躊躇することができる皆さんになって頂きたいと思います。それが命に対する最低限の配慮であり、尊い命を大切にする覚悟の表れだと思うからです。