九州動物学院
 

動物病院には、たくさんのペットたちが飼主さんに伴われて来院しますが、毎日どのくらい命を落とす動物たちがいるのか、考えたことがありますか?きっと皆 さんの想像以上に、多くの命が亡くなっているのが現実です。こうした状況下に身を置いていますと、なんと命は儚いものかと思わずにはいられません。

私たち人間であれば、「喉が痛い」とか「お腹が痛い」などと、自身の不調を的確に訴え、即座に適切な治療を受けることができますので、通常の場合、大事に至る確率は低いと言えます。
ところが動物は違います。動物は「がまん」をするからです。がまんというと少し違うかも知れませんね。動物はその習性から、とことんまで元気に振舞うので す。そしていよいよとなった時、立てなくなるのです。そこまでならないと、飼主さんも気付かない。立てなくなったペットに驚いて病院に連れてくるのです が、残念ながら弱り切ってしまっていることが少なくありません。命を落とす確率が高いのには、こんな背景があるのです。

つい先日も「急にせき込み始めて、何だか元気がないんです」と、飼主さんに連れてこられたわんちゃんがいましたが、診察の結果、急性フィラリア症でした。とても良くない状態でしたので、即入院して頂きましたが、その夜急変して亡くなりました。
当然、飼主さんは悲しみに暮れ、「最期は看取ってやりたかった。」とおっしゃいました。どうせ亡くなるなら、入院などさせず、傍に居てやりたかったと後悔 にさいなまれているのです。お気持ちはよくわかります。でも「最期」に後悔する前に、「これまで過ごした日々」を思いやって見てほしいのです。

この子は急性フィラリア症でした。では生前、予防接種はなされていたのでしょうか。健康管理は?「最期は一緒にいたかった」は当然の感情ですが、最期の一 瞬だけの問題ではなかったはずです。動物の一生はヒトと比べたらあっという間の年月です。だからこそ、ペットと過ごす毎日の大切さに、一日の重さに気付い てほしいのです。

私の好きな言葉に、『一日が一生の如し』という言葉がありますが、「一日を一生の如く生きなさい」という教えです。「朝目覚めた時に誕生し、一日を人生の ように生き、夜眠りにつく瞬間、その生を終える・・」。どうですか?こう考えたら、当たり前のように過ごしている「一日」が、当たり前のように明け、当た り前のように暮れていく毎日が、一層大切なものであると思えてきませんか?

繰り返しますが、動物の一生は儚くも短いのです。だからこそ、取り返しのつかない最期を悔やむより、一緒にいる毎日をより楽しく、より大切に過ごすこと で、本当の意味での最期を迎えられるのではないでしょうか。いつの世も、「後悔先に立たず」です。取り返しのつかない命だからこそ、飼主さんには「一日の 大切さ」を、常日頃から伝えていかねばと思います。ペットとの生涯が、やるせない最期に終わらぬよう、私たちに与えられた大切な使命を果たしていこうと思 います。