九州動物学院
 

動物病院では、毎日の診療に多くの検査機器を扱いますが、これは獣医師よりもむしろ、動物看護師になる皆さんが扱うことになります。当然のことながら、そ れぞれ扱い方が違いますので、まずは取り扱い方を覚えて頂くことが必要です。ところが、この検査機器がまさに日進月歩。1年もすればまたさらに検査精度が 向上した新機種登場となります。特に内視鏡などは解像度がまるで違ってきますので、当然病源の検出力は向上します。
こうして向上し続けてきた検査機器の効果で、獣医療はますます高度になってきました。しかしながら精密化されればされるほど、機械そのものは繊細になって まいりますし、扱い方もしかりです。いくら機械が良くても、使いこなせなければ意味がない。診療技術と検出率向上のためには、私たちも日進月歩の歩みで向 上しておく必要があることは、言うまでもないでしょう。

ところがです。高精度な機械を導入したとしても、それが診療技術や検出率向上と必ずしも正比例ではないというのが本当のところです。なぜなら、私たち獣医 師のほとんどは、診察の時点ですでに病気の原因を8割方察知しているからです。ではその精密機械による検査の主目的は何かと言えば、その診断結果の裏打ち であって、初めから機械で病気を探るわけではありません。考えてみればおわかりになるはずです。診察室に連れてこられた犬や猫たちに診察もしないでいきな り胃カメラを使ったりしないでしょう?まずは飼主さんから様子を伺い、聴診器をあて、触診する。ここまでやって腹部に8割方の確信を得た後、やっと機械に 確定診断の根拠を求めるのです。そして飼主さんに「ほら、ここに異常が認められますね」と示し、早期に現状を把握し、早期に次なる手だてを考える。それが 機械の重要な役割です。

そんな精密な機械をフル活用するためには、やはり私たち獣医師は常に進歩していないといけないのです。まずは目で診て、耳で聴いて、手先で探る。もちろん 嗅覚も重要な役割を果たします。この「五感」総てを研ぎ澄ませ、物言わぬ動物たちの異常を見つけるのは、あくまでも獣医師の診断ありきなのです。そしても う一つ、この五感以外にも大切な感覚があります。そう、「予感・直感」に代表される「第六感」(注:五感以外にあって五感を超えるものの意・インスピレー ション)のことです。
この感覚で訴えてくるのが、飼主さんです。見た目どこにも異常が認められないような時も、「先生、何だかいつもと違うんです」とおっしゃる。ともすれば 「大丈夫ですよ。異常はありませんよ」と言ってしまいそうになりますが、このファーストインプレッションが実はとても重要な場合があります。私たちは動物 のプロですが、目の前にいる「この子」のプロは飼主さんなのです。飼主さんはいつもペットと共にありますので、第六感という非科学的な感覚が、私たちが示 す医学的根拠よりも確かな時がある。それを忘れないでいてほしいのです。

第五・六感という感覚的な能力には個人差は当然ありますが、私は優劣の差ではなく、「信じるか・信じないか」の差であると思っています。動物は感覚を最優 先させますので、五感・六感を無条件に信じます。ところが人間は、さまざまな情報が邪魔をして、大切なメッセージを見逃してしまうことが多々あるのです。 どうか動物たちのように心をフリーにして、物事の、現状の本質を見逃さないでください。どんな精密機械も、使うのは人間です。毎日の生活の中で、純粋な動 物たちとの関わりの中でその力は磨かれます。耳を澄ませ、心を澄ませて常に真実をキャッチできるあなた方でいて下さい。