九州動物学院
 

病院にいるとよく、「犬のCTがある!」「内視鏡がある!」と驚かれる飼い主さんがいらっしゃいます。けれども実際のところ、動物用のCTや内視鏡なんていうものはありません。そんなものは開発しないし、されない。人間のものと(動物のものと)分けることはありません。

 

では、何が違うのでしょうか?

検査する対象がイヌやネコなどの動物か、人間ということです。薬も同じです。人間が飲んでいる薬のほとんどは、イヌやネコで試してから人間に使っているか ら、もちろん動物にも効きます。私がイヌに出した薬と同じものを使っていると「動物の薬と一緒で大丈夫なの?」と言われたりしますが、同じ薬ですから全く 同じ効果がある。医療方法としては、心臓・肺など同じような内臓器官を持っているから、(効果は)ほとんど変わらないのです。

 

 けれども、動物の治療は飼い主さんの方針で違ってくることがあります。

例えば、交通事故でイヌの足先がなくなる。そのイヌは残った足を突いて歩こうとするから、靴下を履かせたり、傷がつけば洗浄、消毒といったケアがさらに必要になってきます。(獣医師の立場からすれば)パットがない足は必要ない足ですから、本当は肩から切りたいんです。

また、ネコが眼をひどく怪我をした場合、消毒したり、薬が必要になったりする。ネコはその眼をさらに触って傷つけたり、緑内障になったりします。炎 症がひどくなれば眼は脳に繋がっているから、命に係わることもある。この場合も、本当は(獣医師としては)眼は取らないとダメなんですね。

 

飼い主さんは「足が全部なくなるとかわいそう」、「片目になってしまうのは嫌」といいますが、足を肩から切ってしまえば、そのイヌは足を突くことも なくなるし、ネコは眼の気持ち悪さもなくなり触ってさらに傷つけるということもなくなる。人間からは“かわいそう”に見えることも、動物にとっては日々の 暮らしが楽になり、QOLが上がります。

 

はっきり言ってしまえば、「何とか体の一部を残して欲しい」というのは人間のエゴだろうと思います。 動物のQOLは人間(飼い主)の考えによっ て、大きく左右されます。治療方法が全く変わることは前述のとおりです。動物がどうすると暮らしやすいのか、人間と動物の価値観の差を頭に置いておくこと が大切なのです。

その動物にとって何が一番大切なのか、動物のQOLについて飼い主さんを含め、考えなければなりません。