九州動物学院
 

飼い主さんに「この薬を飲ましてください」というと、「うちの子はチーズやササミを使っても、絶対に薬を飲まないんですよ」という言葉が返ってくる ことがよくあります。

似たようなもので“おとなしい子なんだけど爪だけは絶対切らせない”、“どうやっても顔だけは絶対触らせない”など、よく聞く言葉で す。実際はどうにかして薬を飲ませないと病気は治らないし、爪を切らないと歩くのも大変になる。この“絶対だめ”という言葉が飼い主さんから出たものな ら、まだいいでしょう。でもわたしたちは動物を扱うプロです。こういった言い訳は仕事として報酬を得るからには、言ってはならない言葉です。逆に“絶対に やる”と言わなくてはなりません。

 


 顔だけ毛がモサモサ、体はきれいに刈られているマルチーズが竜之介動物病院にトリミングに来たことがあります。よそのお店でトリミングに出したと ころ、暴れてしまってどうやっても顔だけ触らせない。そこでそのトリマーは「通常4000円だけどお顔が出来ていないので、半額の2000円でいいです」 と言ったそうです。飼い主さんは半分の2000円を支払った。けれども私は一部でもやるべき作業が出来なかったら一円も受け取ってはならない、全部出来て 初めて全額お金を頂けるものだと思っています。それがプロの仕事というものではないでしょうか?

 


 腎不全は歳をとったワンちゃんネコちゃんにはとても多い病気で、動物病院には腎不全で入院している子がたくさんいます。そういった子たちには常時 点滴をしておかなければなりません。ずっと点滴をしているとだんだんと血管が脆くなってきたり、刺すところがなくなってきたりと留置針(持続的に点滴をす るための針)が入れにくくなっていきます。それでも何とかして“絶対に”留置針を入れないとその子はやがて死んでしまう。“絶対入らない”と言ってしまう と、その時点でシャットアウトされてしまい、留置針を入れることは不可能だということになってしまいます。

 


 “絶対”という言葉は強い意味を持つ言葉です。“絶対やる”といえばやらなければならないし、“絶対できない”といえば本当に不可能になります。 プラスの意味の言葉にならどんどん付けるべきでしょう。“絶対に世の中に役立つことをします”、“絶対に動物看護師になります”。こういったふうに使って いると、脳も反応してその方向に向かっていきます。“絶対に投薬します”といえば、砕いたり溶かしたり、さまざまな工夫をして飲まそうとするでしょう。日 頃から使っている言葉に気をつけてみてください。朝遅刻をしてしまったら“明日は絶対に遅刻をしません”でなく、“明日は絶対間に合います”ですね。常に 言葉をよいほうに使っていると、きっと現実もよいほうに向かっていくはずです。