九州動物学院
 

 『白い巨塔』というテレビドラマを見たことがありますか? 私の好きなドラマの一つで、対照的な二人の医者の物語です。一人は財前といい、彼は地位と名声を求めて外科医になり、もう一人の里見はガンなど終末医療が 必要な患者さんに対し精神的なケアまで行う内科医になります。世界トップレベルの技術を誇る外科医と、患者さん一人ひとりと向き合う患者さんに人気の内科 医。どちらがより名医かという論議は今でも絶えません。そもそも名医の基準とは何でしょうか? 皆さんもぜひ一度このドラマを見て、医療について考えてみてほしいと思います。

 

 竜之介動物病院に「うちの犬はよその病院でガンと診断されたが、手術は高齢で無理だと言われた。何とかならないだろうか?」というような飼い主さ んが来ることがあります。そして治療の難しい子を診ると“手術してみたい。ひょっとすると、自分なら手術は成功するんじゃないか”などと思ったりするもの です。チャレンジ精神というか、難しいからこそやってみたい、という医学的興味が芽生えてきます。けれどもその飼い主さん自身も高齢だった場合、手術を強 く勧めるのはどうでしょうか? 手術するかどうかは、病気・費用・今後のケア・年令・飼い主さんの気持ちや置かれている環境など、さまざまなことを総合的に考えて判断しなければなりませ ん。

 


 今世界にゴッドハンド、神の手を持つと呼ばれる医師たちがいます。そのベスト10のなかに、日本人医師が6人も入っています。日本人は手先が器用 だという証でもあるでしょうが、そればかりではありません。私たち日本人は気持ちの機微を読むというか、人の気持ちの奥まで考えようとしますね。医療でも 患者さんの気持ちや状況を考えて行っていることが、ゴッドハンドと呼ばれる由縁だろうと思います。手術が上手い、下手だけではないのです。アメリカのよう にイエス・ノー、白黒つけるだけでなく周りのことに思いを巡らせ、総合的に判断する力というのが世界で評価されています。皆さんも技術的なことだけでな く、思いやりを持ち周囲をみる力を養ってください。

 


 周囲をみる力、思いやりは医療の現場では大切なものです。医療を行う時はチームで動きますから、チームに関わる全員が自分の仕事だけではなく周囲 を見回す力が必要です。人の気持ちを思いやる感性を持った人こそがよい医師であり、よい看護師なのです。名医師のもとに名看護師あり。技術は2~3割、残 りの7~8割は思いやりなどの内面的なことが要求されます。皆さんも周囲をよく見て感性を磨き、“名看護師”となれるよう頑張りましょう。