九州動物学院
 

シーズーは皮膚病になりやすい犬種ですが、ある日10歳 くらいのシーズーが脂漏性皮膚炎で病院にやって来ました。脂漏性皮膚炎は臭いがきつく皮膚がただれる病気です。飼い主さんとわんちゃんはいくつかの病院に 治療に行き、それでも治らずうちに安楽死を希望してやってきました。飼い主さんは、わんちゃんが病気になったからすぐ安楽死をを希望したわけではありませ ん。腐敗臭やただれがひどい中いろいろな病院に行ってほとほと疲れ、また臭いのきついわんちゃんは孫や周囲の人に嫌がられて触ってももらえないことで可哀 想に思い、安楽死を選択したのです。安楽死も選択のひとつです。ですが、私はこのわんちゃんをみたときに治療ができるのではと考えました。そこで覚悟を決 めている飼い主さんを説得し、治療をしようと考えました。そして説得し、治療を施しました。脂漏性皮膚炎に対していくつもの治療方法があるわけではありま せん。ですから他の病院でも大抵同じ治療をほどこしているはずと考え、私は完全に1ヶ月入院をしてもらうことにしました。入院中は免疫療法や薬浴などを徹 底的に行いました。また、料金の上でも納得していただくため、飼い主さんが負担できる金額内で考えて行いました。この入院は2つの利点がありました。皮膚 炎を治すことはもちろんですが、安楽死を考えた飼い主さんをわんちゃんから解放させ、考える余裕をもってもらうことです。

 

 入院中、絶対治してみせるという思いをもってスタッフと一丸になりわんちゃんの治療を行いました。一カ月後には脂漏性皮膚炎は治りふさふさの毛を取り戻して、わんちゃんは退院していきました。そして4~5年後にわんちゃんは老年性腎不全で病院にやってくるまで元気に暮らすことができました。

 

ま た後にわかったことなのですが、このわんちゃんと私は不思議な縁でつながっていたのです。このわんちゃんは私の病院にこられるブリーダーさんのもとで生ま れました。片足が不自由で、ブリーダーさんは安楽死を希望しました。ですが私は、この子は足が不自由でも生きていけるのではと思い、誰かに譲るようアドバ イスをして安楽死をさせませんでした。つまりこのわんちゃんは譲られて10年間生き、またうちにやってきて、安楽死を奇跡的に免れ15年ほどの生涯を全うしたというわけです。

 

し かし、今回のように獣医師が「さあやるぞ。」と考えてもスタッフが信じ、同調して「さぁ、やりましょう」とついてこないと奇跡は起こりにくいのです。助け ようと一丸となった思いはわんちゃんに通じます。そして、施した治療がぴったりとあえば奇跡的なことも起こり得るのです。こう言った命の縁を感じることは 多々あります。みなさんには命の尊さを考え判断し、命の奇跡を信じてほしいと思います。

 亡くなるときはあっと言う間に亡くなるわんちゃんもいます。ですが、今回のお話のように安楽死を2回くぐりぬけて、命を全うするわんちゃんだっているのです。